給与交渉をする際に知っておきたい自分にかかわるコストについて

正社員で企業に勤めている人が多いと思いますが、一部の大企業のように給与テーブルがあり、役職手当等はっきり決まっている会社であれば、どれくらいの年齢・ポジションで給与が上がるのかは大体分かると思います。そうじゃない会社もたくさんあるだろうし、給与交渉をある程度しないと、給与が上がらない企業もあると思います。

給与交渉をする場合に、中小零細企業に勤めていたりすると経営者と直接交渉しないといけない場面があるでしょう。その場合に、「正社員」として雇用するのに会社がどれだけのコストをかけているかについて知っていると、交渉しやすいと思うので、ちょっとその辺の参考になる情報として以下のコストについて考えてみました。

まずコストをざっくり考えると以下あるかと思います。

給与+社会保険料+設備費(光熱費、建物賃料、備品...etc)

という感じです。

仮に年収600万円の人がいたとします。
計算が面倒なので賞与なしで月収50万×12ヶ月分とします。
健康保険は協会けんぽで、扶養家族は1名にしておきましょう。
(本当は住民税とか介護保険料とかもありますが一旦そこはおいておきましょう)

・給料額面 ......500,000円
(以下控除額)
・健康保険料......39,260円(会社と折半)
・年金保険料......40,145円(会社と折半)
・雇用保険料...... 3,000円(会社は額面の9.5/1000の負担)
・源泉所得税......14,440円(個人負担)

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・給料手取額......403,155円

保険料率をは大体ですが、それほど大きな違いはないと思います。

さて、社会保険として自らも控除されていますが、
健康保険料、年金保険料は会社も同額を負担しています。
雇用保険料は被保険者料率が6/1000に対し、会社は9.5/1000を負担。

会社がこの人に払う金額は

・給与手取額......403,155円
・健康保険料......78,520円(うち半分の39,260円は従業員負担)
・年金保険料......80,290円(うち半分の40,145円は従業員負担)
・雇用保険料...... 7,750円(うち3,000円は従業員負担)
・児童手当拠出金... 650円(100%会社負担)※子ども有無関係なく発生
労災保険料...... 1,500円(100%会社負担)※業種により料率異なる

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合計  571,865円 (×12=年額6,862,380円)

となりそうです。

年収600万円の人を雇用することにより発生する、会社が直接キャッシュで出費する額は年額686万円強程度です交通費支給の会社も多いので、ここに交通費が加わり、福利厚生で住宅補助や食事補助があれば、それも含まれます。

そして、個人に紐付く支払いではありませんが、オフィスの一定のスペースを使うことになるので、ビル賃借料や、光熱費、パソコン等の備品、携帯電話支給があれば通信費、コピー紙などの消耗品等々、加えて随時指導してくれる人がいればその人の人件費等。

雇用されるのには、コストとしてはこれくらいが加算されることになります。これらのコストは会社としてかかるコストを社員数で頭割りすることになりますし、福利厚生も会社によりまちまちなので何とも言えませんが、年収600万円の方の雇用コストは、800万〜900万位にはなっているはずでしょう。

その際、自分にかかる雇用コストは誰が稼いでくれているのか。あるいはその雇用コストを捻出するような改善(コスト削減)が出来ているのか。
単に「年収は○○万円以上」と希望をいうのではなく、「自分にかかるコスト」をしっかり把握しておくことで、冷静でお互い納得感のある希望を出すことは可能ですし、何をすれば給与が上がるか?について自分自身も明確になるのではないでしょうか。

この辺りの意識を持つことで、どのくらいの売上げがあれば、給与が上がりやすいのかを考えるための戦略として自分にかかるコストについて、知っておくことは重要でしょう。職種・ポジションにもよりますが、今やっている仕事とこれまでの実績からについては、勿論心情的に、いくらか上げて欲しいという事もあるかと思いますが、その作戦では何回も通用しないと思います。

給与交渉をするのは、年俸制で毎年契約更改するみたいな仕事でない限りは、あまり直接交渉する機会というのは普通は少ないかと思います。かくいう自分も給与交渉というものは、転職する際の1回しか今までしたことはありません。

そもそも、あまりするものではないと思っていますが、いざ自分が本気でするとなった場合には、上記の事を考えて、かつ会社の将来性の予測、リスク幅、そのための自分のヘッジ分など、それ相応の理論武装をしておいて取り組みたいと思います。

でも、正直そこまで考えるのであれば、給与交渉までしなくても、そもそも会社に自分の意見・意思を伝えることにおいて満足するかもしれないですけどね。