安全と安価は相容れないよねえ

福島第一原発 ―真相と展望 (集英社新書)

福島第一原発 ―真相と展望 (集英社新書)

読んでいると、放射能の害が人体に与える影響については、首都圏に住んでいても絶対に安全であると言い切れないし、まだまだ余談を許さない状況が福島第一では続いていると警告している。

原子力村の利権や、代替エネルギー、化石燃料のコストなどもろもろ考察すべき事があるようです。これからのエネルギー政策を考えるうえでは、福島前と以後では全く違うものであることは確実だろう。

自然の力は私たち人間を超えるものです。

「どんなに完璧な(foolproof)システムにおいても、遅かれ早かれ、愚か者(fools)が証明(proof)を超える」

異状が発生しても機能を失わない設計を指します。ただ、それもいずれは破られてしまいます。

今回の件が難しいのは、放射線が出ているので、原子炉の内部については誰もまだ正確で厳密な状況を把握できないということにある。人体への危険リスクや影響範囲が把握できないような物は、使わないという考え方も分かるが、福島について言えば、実際に現在進行形で事故が進んでいる。

見えない放射線と健康被害については、今後どうなるかについては、定量的に判断できる材料が少なく、すぐに首都圏を離れることを決断するまでではないと思っている。それよりも、今回の事故後に一番思ったのは、原子力発電はコスト面で節約できるという話であったのに、1年あまりで電気代が上がるという話が出ているのが、まったく節約できていなかったのでは?と庶民としては一番思うところである。

どんなものでもリスクがあるのは、自明であれば、起きた時にどうするか?を共有することの方がコストとしては安いのだろうが、実際に起きた時にその話をしても通じないというのもよく分かる。人類が予想もしない事故が起きた場合に、自己責任で考えろというのはあまりにも無下であるが、これからの自己責任は、それぐらい選択ができないぐらいの、誰も正解が分からない決断を、どんな個人でもしないといけない状況が起こり得る。